年齢なんて関係ない!自分のペースで記録を狙う、フリーダイビング(その1)

3月21日に東京辰巳国際水泳場で行われた「TrueNorth フリーダイビング インドアカップ in 辰巳II」を観戦してきました。

会場では、以前STAMPS MAGAZINでも取り上げたフリーダイバー・水中モデルの廣瀬花子選手ともお会いでき、彼女の説明を受けながら、フリーダイビングとはいかなるものかその試合を間近にし、肌で感じたことを記します。

人類が魚に近づくその瞬間

フリーダイビングというスポーツを耳にしたことがある人は、おそらく海の中にぽっかり空いた深淵穴、いわゆるブルーホールに潜り込む勇気ある映像を目にしたことがきっかけであるのかもしれない。
参:Guillaume Nery氏が挑むディーンズブルーホールの映像

この広大な海にはいくつかのブルーホールの存在が報告されており、深海の魅力に引き寄せられたダイバーたちが世界各地から訪れ、中には不幸なことに命を落としてしまうプロもいるという話だから、必ずしも景色の美しさだけでは語ってはならない空恐ろしさがブルーホールという言葉にある。

だが元来フリーダイビングという競技にはいくつかの種類があり、自身の泳力だけで垂直に何メートル潜れるかを競うコンスタント・ウェイトと呼ばれる種目もあれば、呼吸を止めて水面に浮き、その時間の長さを競うもの(スタティック・アプネア)、垂直方向ではなく水平に何メートル潜れるのかを競うもの(ダイナミック・アプネア)といった具合に、言ってみれば陸生動物である人類が「いかに魚に近づけるか」を競う性質の競技であるとも表現できるのかもしれない。

すくなくとも僕がこの東京辰巳国際水泳場に来て、人生ではじめてフリーダイビングの試合を観戦した時にまずはじめに感じいったものは、そういった詩的な情景だった。

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大きなフィンを足につけ、悠々と泳ぐ選手たち。まるで人魚のようだ。

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一見溺れているのかと見まがうような光景だが
これも閉息時間を競う立派な競技の一つだ。

 

 

廣瀬花子選手との出会い

今回は浦安でダイビングショップを経営されているTrueNorthさんが主催される「TrueNorth フリーダイビング インドアカップ in 辰巳II」という試合を見学させて頂いた。

参:TrueNorth公式ウェブサイト
https://truenorth.jp/news/?p=144

本大会は東京辰巳国際水泳場(東京都江東区)で開催されたのだが、この施設、ご丁寧にも最寄りの豊洲駅、辰巳駅、新木場駅から無料シャトルバスを運行しており、土地に不慣れな者にとっても観戦しやすいロケーションとも言える。

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東京都江東区にある東京辰巳国際水泳場

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なんでも2008年に北島康介選手が世界新記録を樹立したのがここ東京辰巳国際水泳場であるらしく、近代的なコンクリートの建物の中にはメインプールとサブプール、ダイビングプールという3つの屋内プールが完備されており、この日の大会が行われたサブプールの隣では、弾力性のある飛び込み板から大胆にジャンプして、宙で体を捻って水中に姿を消すなんともアクロバティックな飛込競技の練習も行われていた。

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今回の大会はサブプールで行われた。

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隣のプールでは奇術的な飛込競技の練習が行われている。

室内は温水管理されており、長袖Yシャツにスラックスで来てしまった僕は、その蒸し暑さにたまらず袖まくりをしてしまう。
ここでは半袖、裸足といった格好がベストであり、観戦者はプールサイドの赤いプラスチックでてきた椅子に腰かけ、目の前を泳ぐ選手たちをほんの2~3mといった距離感で応援することになる。

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片道50mの温水プール。とても清潔に管理されている。

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この両サイドのコースで計測が行われる。

少し場違いな自分の服装を悔いながら、室内の様子をひとしきり見渡していたところ、遠くから見覚えのある金髪の女性がこちらに歩いてくるのが目に入った。
今回取材のご協力をお願いしていた、廣瀬花子選手である。

廣瀬選手と言えばSTAMPS MAGAZINEでも紹介されている通り、日本のフリーダイバーを背負う第一人者の一人である。

参:STAMPS MAGAZINE/フリーダイビング 廣瀬花子選手
https://stamps-magazine.com/?p=3550

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Fiiiiishの鞄を手に満面の笑みの廣瀬花子選手。

三浦半島のちょうど南に位置する伊豆諸島の1つ、御蔵島(みくらしま)で、幼い頃からイルカと共に泳ぐことでフリーダイビングの素養を身に付けてきたというから天性の潜水能力の持ち主なのかもしれない。

廣瀬選手はTrueNorthさんの専属インストラクターもされているとのことで、この日の大会は選手ではなくスタッフとして参加されているようだった。

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競技を前にして選手を気遣う廣瀬選手。
この日はスタッフとして大会運営に専念された。

人懐っこそうな眼差しの中に、時折強い光を宿すのは、世界大会という荒波の中で団体戦・個人戦ともに幾多もメダルを獲得してきた一流のキャリアとしての経験が、競技を前にして無意識のうちにアスリートとしての本能をさらけ出してしまうが故なのかもしれない。

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競技を終えた選手に労いの言葉を投げかける廣瀬選手。

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選手と共に喜びを分かち合うのもまた廣瀬選手らしい。

 

その2へつづく。

 

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執筆:U